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ムルティプラに乗ってきた

ムルティプラの試乗に行ってきた。ムルティプラは横三人乗りのシートを二列並べることで6人乗りという、他に例を見ない程独特のパッケージを取ったクルマである。

通常6人乗りといった場合、二人がけシートを三列並べることが多い。こうするとだいたいサードシートはしょぼい出来で、6人乗りというよりは素直に4+2とでも言えばいいと思うのだが、ムルティプラは違う。6人乗りというからには6人全員が平等に座れるようにできているところが凄いのだ。

さらに二列シートにより、ホイールベースは思い切り短くできる。トレッド長に対してホイールベースが短いと、コーナーリング性能が良くなる。ムルティプラが乗り心地よい割にハンドリングもいいのはこの為だ。かつて初代エスティマは、エンジン搭載位置を低めることによって乗用車風のハンドリングに近づけようとしたが、ムルティプラはホイールベース/トレッド比によって同じ効果を得た。これは6人平等レイアウトによる一挙両得である。

そういうわけでムルティプラは、その異形なルックスとは全く逆に、合理性の塊によって作られていると思っていた。ところが実際に試乗してみて、最後の最後でムルティプラは、理屈に合わないヘンな妥協をやってしまっていることに気付いた。

それは床が絶対的に高く、十分な室内高を取れなかったということである。そのおかげでリヤシートに座っていると、何とも言えない圧迫感を感じてしまう。おまけに座面の高さが中途半端で、ワンボックス風にアップライトに座らせたいのか、乗用車風に寝かせて座らせたいのか、今ひとつ判然としない。このリヤシートは確実にダメだ。小柄な人ならアップライトに座ってちょうどいいだろうが、170cmというごく平均的な身長の私だともうどうやって座っていいのか分からない。あとほんの数cm床を下げるか車高を高くするなどして、十分なヘッドクリアランスと十分な座面高を確保すべきだったことは、エンジニア側も分かっているはずである。どういう事情でこうなってしまったのかは知らないが、これではせっかくの6人平等レイアウトも無意味だ。近場ならともかく、長距離このリヤシートに座って過ごせというのは私に取っては拷問に近い。

もう一つガッカリしたことがある。確かにエンジンは良く回る、足は良く曲がる。だが、乗り心地がどうにも我慢ならない程にうすっぺらい。別に乗り心地が悪いわけではないし、逆にフニャフニャってこともなくちょうど良い固さなのだが、なぜだかうすっぺらく感じるのである。フィアットはムルティプラの素性の良いディメンジョンにおんぶにだっこで、ちゃんと足回りに金かけていないのではないか?これまで私は、プジョー、シトロエン、アルファロメオ、VW、BMW、キャデラック、ジャガーなどに乗せてもらう機会があり、それぞれに良さがあったが、このムルティプラの乗り味だけはどうやっても褒めたくない。あるいはこれは国産車に比べてもそうで、一昔前の商用及び商用派生ワンボックスよりは遥かにいいが、フィットあたりのよくできたコンパクトカーなどに比べると、正直どうかと思う。

こういう場で特定の車種批判をすべきではないのかもしれないが、それだけ個人的にムルティプラにかけた期待が大きかったということでご勘弁願いたい。いずれにしろムルティプラは、他のラテン車乗りからも注目されている存在であり、子供が生まれるなどして乗り換え候補にされることが多い。だからここで声を大にして言いたいのは、購入に当たっては必ず試乗してみて決めること、その際ドライバーズシートだけでなくリヤシートにも座って、お店の人などに運転してもらうことである。運転しているだけでは良く回るエンジンと良く曲がる足回りに喜々とするばかりで、リヤシートに座る人間の気持ちは分からない。少なくとも私はそうやって上記の感想に至った。皆さんはどうお感じになるだろうか。

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Tracked on October 20, 2006 10:48 PM

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