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体罰について

おそらく今では教師による体罰はリスキーな行為となるのだろうが、私(たち)が学生の頃はまだたくさんあった。

いい年になって我が身の若い頃を振り返れば、自身の受けた体罰に何かしらプラスの意味を見いだす人もいるのかもしれないが、少なくとも私に取っては何の意味も成さなかった。それというのも、教師による体罰というもののほとんどが教師の個人的な感情に基づく「キレた」上での行為であり、生徒にとって何の説得力も無かったからだ。

例えば今でも覚えているのは、昼休みを待たずして弁当を食べてしまう早弁、出席を取る時に欠席している人間の代わりに返事をしてあげる代返。そのどちらも私は当事者ではなく傍観者ではあったが、いきなりその生徒をはり倒した教師を見て、あっけにとられた。普段暴力を振るうような先生ではないのに、突然「キレた」からである。早弁も代返も悪い事には違いないが、初犯(?)なら口頭指導で何ら過不足のないこと。しかしその時の教師が「キれて」しまったのは、なんだかよくわからないが、とにかくその先生の「地雷」に相当するスイッチに触れてしまったということなのだろう。人は誰でもそんなスイッチを持っているものである。他の人から見れば「なんでそんなことに…」と思うような所で急に怒り出したりする。教師だって一人の人間なのだからそういうところがあって当然ではある。

ただそれは職務上の立場を利用した単なる暴力行為にしか過ぎず、何らかの教育的効果を狙った「体罰」とは、とても言えないのである。傍の生徒から見ていても、キレて殴っているというのは明白なので、みっともないことこの上ない。上記二つの例でいうと私自身は傍観者であったことは既に述べたが、そこから学んだことといえば、その二人の先生の個人的なスイッチを発見したことだけである。こんなご機嫌取りみたいな学習がその後の人生の糧になるわけがない。(まあ、社会人になって上司に取り入るには少しだけ役に立つかもしれないが。)

このように、私のような中年でさえ学生時代の体罰などろくなものではなかったのだから、いわんや今の学校でそのような行為を肯定する材料は一つもないであろう。

ただ、一人だけ例外の先生が、いるにはいた。かなりお年を召した、しかもかなり小柄な先生なのだが、すこぶる恐ろしく、授業中何回平手が飛んでくるか分からないような先生だった。些細な事でもすぐ平手が飛んで来るので、どんなに模範的に振る舞っていても、在学中にその先生の殴打を避けるのはほとんど不可能と思われた。まるで軍隊のような雰囲気である。どんな大人しい生徒でも名前を呼ばれれば体中の力を振り絞って返事をし、全速力でその先生に向かって走っていく。そうでなければ容赦のない殴打が飛んでくる。一回り以上小柄な先生が、やたら手足の伸び切った高校生数十人、時には数百人を一喝する様は壮観ですらあった。とにかくその先生の発する気合いに圧倒されてしまうのだ。その割に、職員室で雑務をこなしている時の先生は、どこか生気が抜けたようにも見え、ただの小柄なおじいちゃんとしか写らなかったりする。それがいざ生徒を前にすると豹変するのだった。この先生はいつも生徒に100%の全力を強要する代わり、自身もいつも100%、いやそれ以上の力を振り絞って生徒に相対していたのであろうと思う。

その先生が具体的にどんなことで怒り出すのかについては、あまりに多すぎて忘れてしまったが、ただ私たち全員がそこから学んだであろう事は一つはっきりしている。それは「つまらん小細工をするな」ということである。その先生は、とにかくしかられまいとするだけの生徒のあざとい行動を即座に見抜き、そんな時はいつもより執拗な罵声と平手打ちが続くのだった。とにかく子供というものは大人や教師に取り入って、波風を立てぬよう対策を立てるものである。私たちはこの先生の前で、それまでのそんな姑息なやり方をすべて暴露されてしまった。「何事も全力で当たり、それでも失敗したら素直に二、三発殴られれば良いのだ」 ー そんなあきらめた風でいて、しかしどこか潔い感覚が、確かに体の中に残っている。

これは体罰が教育の中でバランスを保っていた旧秩序の最後の名残である。何かと言うとはり倒され、しかしああこういうことなのかと妙に納得できる部分もあるものだから、うらみがましいことを言う生徒など一人もいなかった。他の厳しい先生に対しては、お礼参りしてやるだのなんだの息巻く生徒も、この先生に関しては何も言わない。この時の生徒の何人かは教師になったかもしれないが、現代においてこの世界観を生徒達に伝える事はまず不可能である。これからの子供達は、こうした旧秩序の弊害を知る事はあっても調和を知る事は永久に無い。それに変わる新秩序を打ち立てるにはまだ時間が必要だろうし、旧秩序をなぞらえるよりもよほど難しい作業になるはずである。

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