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GPSは登山革命

Garminなどが日本で流行り出した頃は、まだGPSレシーバの感度が十分でなく、ちょっとした樹林帯に入るとすぐに衛星を見失ってしまった。仲間と一緒に山に登ると、しょっちゅうそういうことが起こるので、失笑の対象にすらなっていた感がある。ここで多くの登山愛好家がGPSを見捨ててしまった。

ところが今のGPSは違う。かなり鬱蒼とした樹林帯や谷底でもめったに衛星を見失うことは無い。精度も問題無く、地図上の登山道をきちんとトレースしてくれる。あまりにもあっけなさ過ぎて、まるで現実感が無い。何しろ今までは、地形図の細かい等高線を読み、高度計とコンパスを駆使してなんとか現在地を推定していたのだから、ボタン一つで現在地を表示してくれるGPSには何か狐につままれたような気分にさえなる。10年以上地図とコンパスで山歩きをして来た身に取っては、登山が登山と思えなくなって来る程の、まさに革命的な出来事であると言えよう。

もちろんGPSに頼らない読図力というものは必要である。例えば電池が切れた時、あるいは落としたり転倒したりで壊してしまったその時、「私、地図は読めません」では無事に帰って来ることができない。GPSを過信せず、基礎的な読図力を付けてから山に挑むべきだ。

という正論も、今はどこか虚しく響く。何しろGPSは、どんなベテランの読図よりも早くて正確なのだ。それに読図と言っても、二点三角法等で正確に現在地を割り出すことのできるケースの方がむしろ稀だ。多くの場合は「推定現在地」に過ぎず、その推定を元に歩き続けてからやっと、その前の読図の成否を判断できるといった具合だ。GPSならボタン一発で済むものを、そんなあやふやな技術を習得したがる人がいるだろうか?

高度計が出回ったときはまた事情が違った。例え現在高度が分かったとしても、同じ高度の場所は地図上では理論上無限大に存在する訳なので、やはり読図力というものが要求される事態に変更は無かった。高度計は絶大な武器ではあったけども、使いこなす為には伝統的な読図力が必要で、読図ツールの一つの域を出ることは無かったのである。

GPSであっても、もしそれが地図付きでなかったなら、ぎりぎり読図ツールの一つであると言えたかもしれない。なぜならGPSが示す経度緯度を自分で地図上にプロットしなければならず、これは技術の一つであると言えるからだ。ところが今のGPSはなんとかして地図を入れることができてしまう。現在地が地図の上に表示されているのなら、もう地図を「読む」必要などは無い。そこにあるのはただ単に地図を「見る」という作業だけだ。道路地図を見ながら町中をドライブするよりも簡単なことになってしまうのだ。

だからもしこれからGPSの購入を考えるなら、純然たる薮こぎのような特殊な用途に特化する場合は別として、地図を入れられる機種が断然お薦めだ。どうせGPSを導入するなら、とことこんラクができた方が感動も大きいだろう。

また、GPSは実際の使用シーンである種の矛盾を抱えていることも覚えておいて損は無い。GPSの感度を上げる為には、上方に障害物がない場所に設置するのが望ましい。例えば頭の上とかザックの上とかだ。しかし頭の上というのはかなり奇特なルックスになるし、ザックの上では歩きながら取り出すのが難しくなる。かといってポケットに入れておいたり、ストラップで首から吊るすのでは、感度が犠牲になってくる。このように一体型GPSでは、感度の確保と閲覧性の両立が難しくなって来るのだ。Garminなどを使っている人が、現在地確認というよりログ取り(自分の歩いた軌跡をGPSに記録する)に使っている人が多いのには、こうした矛盾も一役買っているように思う。

そこで私は、GPSとPDAが別体になったものを使っている。GPSはザックの上に固定、PDAはベストのポケットに入れておいて、両者はBluetooth(無線)でリンクされる。こうするとGPSを感度良い状態に保ち、なおかついつでもポケットからPDAを取り出して現在地を確認することができる。結果的にバッテリーも一つ増える訳なので、電池の持ちもよくなる。ログ取りはPDA側で行うこともできるが、できればGPS側にその機能を持つものを買った方が良い。というのは、PDAは普通にメモを取ったり(携帯の電波が入れば)ネットにつないだりできるので、常時ログ取りに占有されているよりも遥かに使いでが出て来るのだ。

私の場合は主に旧道調査のメモ取り、そして銀塩カメラの露出データのメモ取りに使っている。そういうメモを取る必要のある人に取っては、PDAは唯一の選択肢となるであろう。なぜなら、紙とボールペンでは雨の中メモを取ることができないからだ。それがPDAとAquapacの組み合せなら、どんなどしゃ降りの雨の中でも平気でメモを取れる。他、幸いなことにまだ活用したことは無いが、ケガや病気に対する応急処置マニュアルなども入れてある。同行者がいるなら、彼らの緊急連絡先や住所などを入力しておくのも良い使い方だろう。

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